講演1 :「身近な京都〜お客様へのおもてなしを通じて〜」
横 山

  実は,私はプロテスタントの学校を出ております。中学,高校,大学と聖書に親しみました。ひとつすごく好きな言葉がありまして,昔,ある宗教家が説法を行った時に「変えられないものを受け入れる平静さ,変えなければいけない勇気,そしてその二つを分別できる知恵を与えたまえ」そういう説法なんですが,セレニティの説法と言いまして,セレニティというのは平静さです。その言葉がいつも印象に残っています。そういうことをずっと考えていて京都に移って来ると,特に,京都にはまだまだ残さなければならないものがいっぱいあります。それは神社仏閣ももちろんですし,先ほど景観法のお話もありました。それが,そこに住んでいる人たちに本当に必要なものなのか,話し合いも必要なのかもしれません。訪れる人と住む人たちの格差があってはいけないと思います。例えば,平安時代のようにお庭で和歌を詠みましょうと言っても,トラックががんがん通っていたら詠めないですね。今の時間軸の中で,私たちはどういうものを受け入れなければいけないのか。どういうことをして変化していかなければいけないのか。その答えは,私たちの中にあるのだと思います。蓄積された知恵を出し合うことによって,もっと変革的なものが生まれていくのではないでしょうか。

  私たちは昨年3月に開業いたしましてから,よく皆さんに京都らしいホテルと言われます。ホテルに入ってこられたエントランスのところに500本ぐらいの竹薮がありまして,それから客室には着物の生地をヘッドボードに置いて,京都らしい雰囲気を出しておりますが,私も京都のブランド力の大きさには驚きました。外国の人が来るかなとは思っていましたが,開業した日,1番初めに来られたのはフランス人の方でした。最初から外国人が20%。その後もどんどん増えて昨年の10月には全体の50%の人が外国のお客さまとなりました。もちろんこれはハイアットというブランド力もあるのですが,何よりも間違いなく,京都というブランドにつられて皆さんお越しになる。タクシーがハイアットに入った瞬間に「京都らしい」っておっしゃる。何が京都らしいのかなと思って聞くと「竹があって京都らしい」。実はパーク ハイアット 東京は41階にロビーがあって,そこを開けますとハワイアンバンブーっていう竹がたくさん植わっています。でも,それを見て「京都らしい」って言われたことは私,一度もありません。竹を見ただけで,着物の生地を見ただけで「京都らしい」になってします。全てが京都らしくなる。私はよく「京都らしさ」って何ですかって聞かれるのですが,私が自信を持って言えるのは京都にいることだと思います。京都に生活して,京都の人たちとコミュニケートすること,これが京都らしさ。だからホテルはやっぱり地域に密着して,地域と共生して,地域と一緒に成長していかなければいけない。そして私たちホテルの役割は,しっかりとした雇用をして,しっかりとした分配をして,そしてホテルとして成長していくこと。そのためには私たちは京都にもっと近づいて,京都のことを知らなければなりません。京都のことを世界中に知らせることが必要だと思います。

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