講演1 :「身近な京都〜お客様へのおもてなしを通じて〜」
横 山

  そして,人と話すこと。人と話すことによって知識を共有することができたり,吸収することができたりします。正面玄関から入ってくるお客さまだけがお客さまじゃなくて,牛乳を届けてくれる方,新聞を持ってきてくれる方,タクシーを運転してくれる方,そういった方たちが全て私達のお客さま,従業員も私にとってのお客さまです。いろんな人達とコミュニケーションすることによって,いろんなことを吸収することができるのだと思います。こんなホテルを運営していきたいと思っています。それは京都という場所があるからです。デザイナーの杉本さんは,スーパーポテトという面白い名前のデザイン会社の方なんですが,パークホテルに来られて,「ここ絶対俺がやる」と,そうおっしゃっていただきました。うちの社長におっしゃったのは,「ここにインスパイアされた,ここに魅了された,この場所,土地に魅了された」とおしゃってくれて,私としてはそれがありがたかった。うちのホテルにはたくさん従業員がいます。それで,東山にもかなりたくさんの人が移ってきた。東山にも若い人口が増えて,ここでもしかしたら子供が生まれるかもしれない。学校の統合よりは学校が広がっていくほうがいいだろうし,今ある,変えてはいけない人々の温かい視線や思いやりや,伝統とか文化とか施設,そういったものを守っていく。私たちはそこに共存して成長して,それを分配していこうと思います。それは従業員はもちろんですが,その地域に対しても。そんな企業になれたら良いと思います。

  こんな風に感じながら京都で生活しています。そして,京都の豊かさをとても嬉しいと思っています。とりとめない話になってしまいましたが,本日はどうもありがとうございました。

司 会

  どうもありがとうございました。では,今のお話に関して意見交換を行いたいと思います。御質問ございます方,どうぞ挙手でお願いします。

会 場

  最近,京都や大阪の有名ホテルの名前がどんどん横文字の名前になっているのは非常に残念だなと思っているのですが,やはり,横山さんが話しておられたホスピタリティの精神というものが日本人には無かったためと言えるのでしょうか? また,京都の排他的なところ,外の人に対してホスピタリティがあるようでないような,こういったところは変えていかなければいけないのでは,とつくづく思っています。

横 山

  私も日本の名前が片仮名に変わっていくのは残念だと思っています。ただそこがビジネスの厳しいところでもあります。日本のホテルは例えばサービスという言葉に対して「お金をもうけなくてもいいんだよ」という精神があったと思います。サービス残業も当たり前。サービスしてお客さまを喜ばせるのが仕事なんだ,お客さまが来るようにするのは自分達の仕事じゃない,というような考え方があったんだと思います。それがために外資系に運営が変わってきて,価値観自体も変わってしまった。まだまだこれからも,こうした傾向は続くと思います。ただ,私たち外資系ではありますが日本人であることに間違いはないので,外資系の利便性を追求したシステムを,日本人である我々が,この京都という場所で流用していく,日本の伝統的なおもてなしの気持ちがうまく融合した時にはじめて新しいビジネスモデルが生まれる。それが日本の名前のホテルであったらいいな,とは思います。

司 会

  ありがとうございました。まだまだお話は尽きないかと存じますが,申し訳ございません。時間になってしまいました。どうぞ横山さんにもう一度大きな拍手をお願いします。

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