講演1 :「身近な京都〜お客様へのおもてなしを通じて〜」
横 山

  お庭に座って眺めてみなさいってよくおっしゃいます。でも,その時,風が頬をちょっと伝わっただけでも,その喜びとか感動とかが増すのだと思います。それを私たちのレストランでお話すると,皆さんレストランに行く時,お金を払って行くのですから食事がおいしくて当たり前ですよね。でも,その環境が,入った時に何かお香の残り香があったり,お庭を見ると苔が生えていて水が打たれている。あるいは石塀小路を入って行ってガラガラと戸を開けるとそこがレストランであったり。その環境が食事を120倍,200倍おいしくします。そして,もっと必要なのはそこにいる人だと思います。カウンターに座ると真っ白な割烹着を着た板前さんが元気よく声を掛けてくれて,今日の料理の一つ一つを説明してくれる。食事を出すタイミング,手の美しさ,着ている着物とか,そういうものが全部集まった上で,「この料理はうまい!」になるかもしれない。それがこの京都にはあるんじゃないかなと思います。料理がおいしくて当たり前ですが,それをもっとおいしくするのは環境であり,おもてなしであり,人であると思います。そうした環境をもっともっと大切に守るべきであると思います。たまたま今はレストランの例でしたが京都にいればこれだけの知識があり,環境があって,すべてが京都に来る楽しみになるのだと思います。東京駅の新幹線乗り場で京都に行く人たちの顔を見てください。泣いてる人や怒ってる人はきっといないですよ。これから京都に行くんだと思うとすごく浮き浮きしています。それだけ京都という町,地域に対して,東京から,あるいは海外から来る人たちの思いは違うのだと思います。今お住まいの人たちよりもっともっと感動を求めに来る。特に今のようなストレスの時代,自分の中にもっとリラックスしたい,成長したい,文化を知りたい,違う場所にいってその場所を知りたい,感性を豊かにしたいという人たちにとって,この京都というブランドはどこにも負けないと思います。

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