意見交換
参加者

 最近京都創生っていうのが色んなところで非常に話題になったり報道されたり、京都市でも話題になっていますが、私自身いろんなところで見て勉強してきたことから言えば、京都の非常に華やかなところとかね、見ごたえのあるところばかりがスポットが当たって、でそういう世界はどうも私から言えば足袋の世界で築き上げられてきた。特に江戸末期まで。例えば狂言にしてもお抱えがいて、いわゆる御所が茂山さんとこをお抱えしてる。あるいは武士がお抱えしてる。そういう中で足袋の、いわゆる家元とかお坊さんの世界とかいろんな足袋を履く世界、室町とか西陣とかそういうお金があって裕福で絵も高いもん買える、伝統工芸や、能の世界も狂言の世界もすべてそういう世界はずっとお金持ちの世界でした。ところが一般の我々も裕福にある程度なってそういうところへ参画する中で、どうしてもまだそこから抜けきれずに、いろんなスポットの当て方をもう少し考え直さないと。例えば狂言で言えば最低5千円前後はする。ところが例えば大念仏狂言なんか行くと800円であるとか無料である。そこはほんとに一部の人しか行ってない。そういうところがどうもギャップがあって。テレビでも放映されるのは非常に見ごたえのある見栄えのあるいいとこばっかりを京都というて、そういう意味では『京都上がる下がる』だとかああいうふうな地道な、もう再放送が終わりましたけれども、いろんな方が、ああいう地道な地域に根ざしたところをもう少しスポット当てられないかなと思ったりしておるんですけれど。

山 本

 他にありますか、今のお話。『京都上がる下がる』っていうのはたしかに路地裏の話なんですよね。だから僕はあのタイトル付けたプロデューサーにも番組制作企画した連中にも褒めたんですよ。普通だとおっしゃる通り表舞台しかやらないんだけど。ああいう取材ってなかなか大変なものなんです、逆に言うと。だいたいテレビの取材あるいは雑誌の取材なんて定番がありましてね、ここはこうやればいいなんてノウハウがあって、そこに登場する人物もかなりリストアップされてるんです。ところが例えば『京都上がる下がる』で何とか小路をやるとなるとね、本当にそこを歩いてね、まあマスコミの人間にとっては原点とよく言うんですが、ほんとに足で歩くことからテーマっていいますか取材対象を発見していかなきゃいけないっていうね、そういう部分でなかなかの企画だったんじゃないかと思うんです。でもあれでもやっぱりもうお馴染みの人がやっぱり出てきますけどもね。そのへんはまあ、しょうがないかもしれません。それからもうひとつ僕は京都で痛切に感じるのは、京都人はやっぱり恵まれていると話続けているんですが、僕は恵まれている人は、やっぱりちゃんと責任持つべきだと思っています。1200年の間ここに都があったわけで、一時、離れていったりしたことがあったとしても、広い意味で1200年の歴史があって、その間いろんなことがあって、ただ間違いなく言えることはここが中心だったわけです。やっぱりここにあらゆる意味で豊かなものっていうか質の高いものが集積されてるわけです、その皆さんど真ん中に住んでるわけで、それはもっと言えば地方の人のありかたとか考えてみると、やっぱり京都の人っていうのはそれだけの1200年の最高のものをここに、あえていうと一定の権力、それが今言ったようにお坊さんも、法然院さんもそうですけどもお寺さんも含めて、貴族、権力者が全部掌握してきたわけですから一級のものが全部集まっている。そういう中で文化、いわゆる高級な上層の本当に精髄みたいなものがここに集約されているわけですから、京都の人はそれをやっぱり責任持って守らなきゃいけないし、発信していかなきゃいけないって僕は思いますね。それは責任です本当に。下手するとあぐらかいちゃうんですよ、先ほどの話の方じゃないけど、大河ドラマってあるでしょ、京都人は全然盛り上がらないんですよ。僕も大河ドラマやって、大河ドラマっていうのは舞台になったところは経済的な波及効果があるんですよね。例えば『利家とまつ』っていうと前田利家。あれなんか当時の新聞報道だと金沢周辺に1200億の経済波及効果があったって言われてますし、まあ『新撰組!』も京都に4、500億って日本銀行が言ってますね。そういうようなある種の経済効果も含めて地域の人なんか、なんとか朝の連続テレビ小説も含めて、来てほしいんですよ。誘致合戦やるわけです。でも京都はほっといても舞台になるもんだから京都を舞台にした大河ドラマやっても京都の人は全然喜ばない。当たり前の話でどんな歴史ドラマやったって1200年の都はどっかで舞台になるんですよね。僕は直接は担当してなかったけども担当者がもう「冷たいなあ、京都は」って言ってたのはあれですよ、あの日野富子の話。何でしたか三田佳子さん主演の『花の乱』。これは京都の室町時代が舞台でしたが、ここに京都の行政の方もいらっしゃるんですが、京都の行政も冷たかったようですね。もうほっといても観光客がなんぼでも来ると、いうふうにあぐらかいてたんですよ。それはね、地域の人には絶対理解できないことですよ。そんなことしたら地域は損しますもん。一所懸命お客さん呼んで一所懸命誘致して、これテレビだけの話じゃないですよ。いろんなことで一所懸命やらなきゃ、なかなか。京都はほっといてもいろんなものがあるんですよ。だから下手すると先ほどの方の御指摘のようにそれにあぐらをかいてる人たちっていうのが絶対これはいますよね。僕だって東京時代はいやな目に何回もあってますもん、京都に来て。京都の人はそれだけの偉大な財産を引き継いでいるわけですから、日本の京都じゃなくて世界の京都と位置づけていただきたいですよね。京都の文化っていうか、それこそ紫式部の話じゃないですけれどもこれは世界的に通用しますよ。それからかなりダメな面もいっぱいあるにしても、世界的に持っていって通用する歴史文化都市っていうのは日本では京都しかないっていうのも事実なんですね。ですからブッシュが次に来る時は、サミットなんかの時はほんとにやるべきだと思います。世界に向けて。「世界に向けて京都しよう」てな感じでね、やるほうがいいです。先ほどの話じゃないけど京都しようっていう。「そうだ、京都行こう」てのありましたよね。そうじゃなくって、そうだ京都行こうっていう形で観光客を集める段階は終わったと僕は思ってるんですよね。もう散々来たし、ひどいこともいっぱい。人数だけ増えればいいのかってこと。もう車が混み合うし人が混み合うし碌な事がないと。あんまり増えてもお金落として行かないわけだから。むしろこれからは「京都しよう」でね、アクションとか京都を持ち出すっていいますか、持ち出すんだったら世界にまで持ち出すぐらいの気概を持って1200年の伝統を生かしていただければと僕はほんとにそう思います。それだけのまだ蓄積があるし、これから先の行政、市民の皆さんそれぞれの中でできていくという都市だと思います。プライドを持ってぜひ。私もその一端では一緒になって進んでいきたいと思います。

司 会

 山本先生、ありがとうございました。本来ならば山本先生のお話だけでも10回ぐらい連続セミナーやらんといかんのですが、まあそういうわけにも行きません。ほんとに短時間の間にこれだけの非常に凝縮されたお話を聞くことができました。この先生に対しまして皆さん拍手をもってお礼を申し上げたいと思います。

(拍手)

 それでは、第1回目の連続セミナーでございましたが、みなさんいかがでございましたでしょうか。先ほど山本先生のお話の中にありましたことで、京都創生というのはこうあるべきだということで一つのことを紹介させていただきたいと思います。実は先ほど京都迎賓館のお話が出ました。この迎賓館は、京都のいろんな伝統工芸の匠の技が11種類、生かされてます。本当のいわゆるほんまもんの京都、日本といいますか日本の伝統工芸が生かされたところでございます。アメリカの駐日大使が京都迎賓館の所長に対してこういうことをおっしゃってました。それは、アメリカ国民を代表する大統領が、非常に暖かいもてなしを受けたということで、非常にアメリカ国民が全員感謝していると、こういう大使のお言葉があったそうです。これはいわゆる我々京都の人間が、目指すべき道ではないかという感じを受けているところであります。

参加者

 すいません、我々にも見せてください。

(拍手)

司 会

 あの、実は私も今の平安建都記念協会っていうのは京都迎賓館の一般参観を実はやらしていただいてですね、5500人の定員のところ16万人の応募がございました。で、何とかならんかということで、これは国の内閣府の施設でございましてね、何とか、この前も知事さんも館長に…

参加者

 いままで経済の偉い人ばっかりが見られる。ところが一般は申し込むシステムすらないというのではなくて、やっぱり一般にも何らかの申し込みをしてオープンにしてもらうような方法をしてもらわんと、今は経済人の偉い人しか入れませんのですよね。

司 会

 いや、そんなことはないんですけどね。

参加者

 いや、実際行ってみてそういう目におうたんですよ。

司 会

 私も今言いました一般参観の業務を内閣府から委託を受けまして16万人の方の抽選をこれも厳選にやり、いろんな知り合いから恨まれて、「もうお前とは二度と口利かん」言われるほど恨まれたんですけども、ほんとに見て欲しいと思うんです。で、今迎賓館の方と内閣府の方で折衝してまして、何とか、と言いましても、施設の中、非常に狭いんですね。ですからせいぜい1日まあ500人ほどしか受けられないという状況でございまして。なんとか努力しますということで、御勘弁いただきたいと思います。ちょっと時間がなくなりましたが、以上をもちまして第一回のセミナーを終わりたいと思います。どうもみなさんありがとうございました。お帰りの節にはぜひアンケート用紙を受付の方へお出しいただきますようお願い致します。またお忘れ物のないように、お気をつけてお帰りくださいませ。どうも本日はありがとうございました。

(拍手)

(了)

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