京都創生推進フォーラム
シンポジウム「京都創生推進フォーラム」について

日 時 令和元年7月25日(金)13:30〜16:00
会 場 ロームシアター京都「サウスホール」

オープニング 落語「はてなの茶碗」
桂 二乗

あいさつ 立石 義雄 (京都創生推進フォーラム代表、京都商工会議所会頭)
門川 大作 (京都市長) 

パネルディスカッション 「京都の祭りから考える文化、観光、経済の循環」
 

パネリスト 田中 安比呂 氏
(賀茂別雷神社宮司)
  濱崎 加奈子 氏
(公益財団法人有斐斎弘道館代表理事・館長)
  稲岡 亜里子 氏
(本家尾張屋16代目当主、写真家)
  三木 忠一 氏
(文化庁地域文化創生本部事務局長)
コーディネーター
宗田 好史 氏
(京都府立大学副学長)



パネルディスカッション  「京都の祭りから考える文化、観光、経済の循環」



宗田氏

 「京の祭りから考える」ということですが、祇園祭が1,150周年を迎える中、インバウンドの増加により1.38兆円の観光消費がもたらされている反面、「観光公害」なる言葉も登場し影響が出てきています。

 「観光の経済」という点では、経済的発展だけではなく、文化、景観を守るためにどう活用するかということを考えないといけません。観光があるからこそ京都の文化、景観が持続する。その持続可能性を作っていく新しい仕組みを考えなければいけないわけです。その意味で、「祭り」というのは、皆さんの日々の生活によって支えられていて、その生活を持続するために、毎年祭りをすることで神々に奉仕し、自分達の来し方、それから行く末を考えるという大事な生活文化の発露でもあります。

 今日はそれぞれの立場で、京都の文化を担い、そして祭りを挙行する側の方々から考えるきっかけのヒントを探します。




田中氏

 賀茂祭(=葵祭)や祇園祭など祭りの起源は、自然災害、天候不良などで「なるものもならない」ようなとき、また、疫病の蔓延など、人間の手でどうにも直すことができないような困難に陥ったときに、神の力をもって、おだやかな国になってもらいたいという“願い”から神を祀ったことがその始まりです。6世紀半ばにさかのぼりますが、千年前の源氏物語にも賀茂祭のシーンが描かれていて、当時も多くの都びとが集まって、賀茂祭を楽しんでいた様子が窺えます。

 また、当社には平安時代から鎌倉時代にかけて、天皇陛下の娘である皇女が「斎王」としてお勤めいただいたと同じく源氏物語に描かれています。この制度は鎌倉時代以降なくなってしまいましたが、斎王に代わる「斎王代」として今でも賀茂祭にご奉仕いただいています。賀茂祭は、毎年天皇陛下の御勅使が御名代として来られる「勅使祭」であり、国の繁栄、国民の繁栄のために催行されているわけでもあります。

 現在は、海外の方で結婚式を当社で挙げるという方もいらっしゃいますが、神社の境内の模様もお祭りも千年の時を超えて昔ながらの形のものをずっと変わらず続けてきています。この「昔ながらの形をずっと続けていく」ということが大変大切なことだと感じています。




濱崎氏

 「祭り」=「神様を身近に感じられる時」というものが、生活の中に毎年繰り返されてあることが、すごく大事だと思っています。なぜこれを千年以上も繰り返し祭りをしてきたのか、その理由としてよく言われるのは「原点に帰る」ということです。その原点をコミュニティーの中で毎年確認する、ということだと思います。

 祭りは毎年繰り返され循環しますから、私たちの心が、あるいは町中がもう一度新しいエネルギーを吹き返す作用があるのだと思います。それは年に一度というサイクルに限りません。祇園祭などでも再興されました。再興するということは、エネルギーをもう一度吹き返すということであり、それは現代においてもとても大事なことだと思っています。

 「人々の祈り(=神様とつながる)」、「人を楽しませる芸能」、「民から集めたお金で壊れた橋などの復興工事をする(=公共工事)」、そういったものが一体になった「勧進」というシステムがあったのですが、今の時代とても示唆的に感じます。文化と経済の循環は、かつては当たり前のようにあったのだと思います。しかしながら、今文化と経済といった時に、実は「学問」という要素が欠けてしまっているのではと感じています。

 戦前の商人の方々、皆さんお茶とか能とか、様々な伝統文化を嗜んでおられましたが、そこには文化と経済の循環、そして学びがあったと思います。単に論理的な学びだけではなくて、身体感覚も含めた総合的な学びを、お茶や能、色んなものを芸能に詰め込んで、学び、また伝えてきたのだと思います。




稲岡氏

 京都ほど神につながっている場所はないと思います。ずっと住んでいると実感ないかもしれませんが、まちの中にはきれいな花が添えられた地蔵があったり、四季を楽しむ懐石料理があったりと、外国人にとってはそれが「文化」や「アート」として受け止められています。そして、そうした感動を求めて皆さん京都に来られています。

 もうひとつの京都のすごさは、「人とのつながり」だと思います。祭りも人と人をつなげています。外国の方も参加されているのを見ましたけども、祭りは言葉を越えて人をつなげています。京都というまちにも、祭りにも、持続性のある、自分のことだけではない、コミュニティー全体を考えた社会というのがあると感じます。

 相手の事を深いところで考え仕事をしている、生きている。京都だけでなく日本人にはあたり前にあったことだと思いますが、そういうものが京都にはあり、日本のすごさというのを日々感じています。




田中氏

 京都には歴史ある祭りが大変多く、京都の人達と祭りというのは切っても切れないつながりがあります。祭りというのは、実は日常そのまま、つまりは、神様はいつも私達といっしょにおられるということなのです。

 神社で、神様に衣服をご用意したり、毎朝お食事をさしあげたりしているように、皆さんのご家庭でも、神棚がある方は毎日、水をお替えして神棚にご挨拶する、仏壇行って、ご先祖様にお祈りをささげる、そして、初物や頂きものがあったら先ず仏壇にお供えしてからそのおさがりを食べるなど、不思議がらずされている。我々の日常と言っても過言ではないと思います。特に京都のみなさんはごく自然に日常のこととして神様と一緒に生活されている方というのが多いと思います。




三木氏

 文化庁は2021年度中に、機能を強化し、京都に全面的に移転します。機能強化の観点としては京都にしっかりと残っている「暮らしや生活の文化」と、保存するだけではない「文化財の活用」の2つがあります。

 生活文化については、例えば,京都に来て,当本部の職員も祇園祭の山鉾の曳き手として,祭りに参加させていただいています。生活してみて,祭りの担い手として参加する、ペーパーで見たり、数時間滞在して見るのではなく、その熱気を自分に取り入れて、実際その祭を楽しむということは、有形無形の文化行政に良い影響があると考えます。

 例えば、先日神幸祭を見に行った際に、ふと横を見ると、地元の方と思しき女性が、歩道の縁石に立って神輿を静かに拝んでいました。賑やかな祭りの根底にある、そういう京都の人々の思いや意味を実感できる機会が持てたのは、文化庁が京都に来て、職員が京都で生活しているからこそだと思います。文化庁が京都に来ることは色々な意味があるだろうし、これからもどんどん見つかっていくと期待しています。

 そして、本日のテーマである「文化と観光と経済」。この三つの関わりということでは、特に文化財については、保存だけではなくて、同時にしっかり活用をしていきたいと考えています。活用することによって収入が得られるならば、その収入がまた保存にも使われて、次代につながっていくことになるという思いを持っています。




宗田氏

 祇園祭の有難さっていうのは、「守るもの」ではなくて「祀るもの」。思わず手を合わせたくなる気持ちが文化として人々の気持ちに残っているというお祭の基本を忘れがちになってしまうのですが、まだ京都のみなさんの中にはそういう気持ちが残っているということですね。




濱崎氏

 「文化」というものの捉え方を、もう一度、それこそ原点に戻って考えてみるなら、その文化を愛して、それを一生懸命、真剣に継承していくならば、京都人に限らず、国籍も全く関係なくて外国の方でもどんな方でも継承は可能なことだと思います。




宗田氏

 世界中の人たちが京都文化を深く理解して、京都人と同じように、あるいは京都人以上に深く京都を支えてくれる時代が来るかもしれないですね。




稲岡氏

 お茶などの文化には「時の流れ」みたいなのがあって、それをすごく大切にしているのが、日本人の心だと思います。大都市では感じることができる機会が失われてしまっている「生命のリズム」があって、それが「非日常」になってしまっている時代では、そこにつながることがどれだけ大切かということに気づきました。

 文化というものを外の人とシェアする時、時を交わす中で、その時空の中で、非日常的だけど人がもっとつながる「時」というのを感じた時に、相手は「これを求めていた!」となると思います。

 特に外国人は、日本=京都=神秘的というイメージがあって、「神秘」は「神」につながるもので、「神秘」を作ってきたのは、私達だと思います。そこが、京都、日本が守って来ているもので、そこを大切に分かち合いながら共有できれば、世界の何人とでもつながれると思います。

 ルーツを知っていただくことで、ストーリーがわかり、ひとつの文化と歴史とつながっていきます。そういうものを外からの人は知りたいと思っているので、ちゃんと伝えていくことが、私達京都人としての役目だと思っています。




三木氏

 文化に触れる際、入口の間口の広さはすごく重要だと思います。京都に来る人は文化を少しでも知りたいと思って来るので、そういう人達が間口広く入れれば、京都のことを少し知って面白かったら、自然と奥に入って来てくれます。だから、文化庁では、歴史や文化背景の知識がなくても理解できる翻訳説明文作成や、歴史的な建造物や博物館等を活用した国際会議の開催、子どもたちの文化体験を通じて、そういう最初の間口の広くできるようなお手伝いをしています。

 間口を広く迎え入れて入ってきていただくと、もっともっと京都ファンが増えると思っています。




稲岡氏

 今まで色々なところを移動しながら旅をしないと、もう死んでしまうくらい、いろんな新しいものを見たいと生きてきた私が、もう5年くらい京都を出ずに暮らして生きているのは、やっぱり京都に根付いた魅力があるからだと思います。

 今、その京都という場所に惹かれて世界中から人が来ています。だから、自分が動かなくてもある意味旅をしているような感覚の場所になっていますが、外から来ている人たちから学ぶこと、気づかされることもすごく多いと思います。




田中氏

 平成28年に伊勢志摩サミットがありました時に、世界の首脳の方は伊勢神宮にお参りに行かれました。首脳夫人の方も同じようにお参りして、神楽をあげて、すごくよい体験をされ喜ばれたということです。やはり、日本の文化、京都の文化を多くの方に触れていただくことが大切ではないかと思います。




三木氏

 日本の人達がずっと歴史的に持ってきた、非常に世界的にも普遍的な素晴らしい価値を、京都は非常に純度を高く今まで引き継いでこられてきたというふうに思います。




宗田氏

 市民の皆さんが、この純度の高い文化を支えているということを、今一度自覚しないといけません。だから皆さんこそが外国から来るお客様と接して、話していただくことで、この京都の純度の高い文化が世界に広がっていくのではないかと思います。そういう時代が既に来ているので、京都を閉じるのではなくて、大きく開いていく。それは皆さん一人一人のお力にすがるしかないですが、京都が今直面している新しい時代ではないかと思います。

 京都市は一生懸命取り組んでおりますが、さらに新しい観光文化を発信していく仕組みを、文化・観光・景観を旗頭にしている京都創生の取り組みとして続けさせていただきたいと思います。









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