パネルディスカッション
吉澤

 ありがとうございました。景観法のお話、それから市民がどういうことをしなきゃいけないのかということまで触れていただきました。ありがとうございました。

 最後になりますが、田中さんにお願い致します。田中さんは大和学園、料理学校の副理事長ですが、同時に新京都市観光振興推進計画の外客部会、外のお客さんをどうやって呼んでくるかということだと思うんですが、そこの部会長でもいらっしゃいます。観光客が京都にどんなものを求めてるのかという、そういう面も含めましてお話を伺いたいと思います。

田中

田中氏  皆さんこんにちは。田中誠二と申します。よろしくお願いします。私は先ほど御紹介いただきましたように、本業の専門学校運営の他に昨年から今年の初めにかけて、京都市の新しい観光政策の推進計画の策定にかかわらせていただいたり、あるいは今年の5月に商工会議所から発刊されました『京都の都市格を考える』という本の発刊編集にも参画させていただいた関係で、まず観光振興の視点から京都創生というものを考えてみたいと思います。私も京都に生活する市民の一人でありますので、この京都創生という難しいテーマを市民の目線でどのように自分で考え、日々行動していくかということについても少し触れてみたいと思います。

 まず、皆さんよく御存知のとおり2005年の京都市の年間観光客数は京都市の発表によりますと4727万人と、5年連続で過去最多記録を更新したわけですが、昨年は「愛・地球博」の波及効果やNHK大河ドラマの義経ブームの追い風もありましたけれども、このところの安定した全国的な京都人気というのは皆さん知るところだろうと思います。この京都の観光ブームを支えている背景には、京都市の行政をはじめ京都商工会議所や観光事業者の皆さんや、もちろん各地域の市民団体の皆さんとの連携によるオール京都での京都の観光に対する取組、この努力が実を結んでいるのではないかと感じます。とりわけ外国人の宿泊観光のお客様が実は前年対比で34.2%も増加したこと。それで、これからは2003年に小泉前首相が提唱されました「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の効果による海外観光マーケットの将来の拡大を睨んで、観光立国日本の戦略的拠点都市として京都が外国人の観光客のさらなる誘致に取り組んでいくことが必要かと感じています。つまりこれからはこの京都から多様な文化を積極的に発信することで京都創生を目指していくことも一つの手立てではないかと思います。そういった意味では2008年の京都サミットの誘致は、紛争や緊張が絶えない現在の世界が環境とまち、それから宗教と文明の共存を考えていく上で、異なる文化や宗教が共存して自然を介して調和するこの京都で、サミットが開催されるということは大きな意味を持つと思います。

 一方では観光振興には華やかな光の部分というものがありますが、人が大量に移動・交流していくわけですから、観光資源の劣化ですとか環境と自然がおびやかされる問題、それから交通渋滞、衛生の問題など、影というと語弊がありますけれど、課題となる部分もあります。すなわち観光振興というのは一体、誰のためにあるのか。これは京都を訪れるお客様の満足。それから私達地元住民、地域に住む人々の暮らしの満足。この2つのバランスをしっかりと図っていく観光振興施策の展開が非常に必要になるのではないかと思います。

 このような中で京都の魅力って一体何かなと考えてみました。京都を訪問したことのある外国人の方々に京都の印象を伺いますと、たいてい英語でお答えになる外国人の方々は「Beautiful city=美しいまちですね」とコメントされます。京都には森と緑、南北には鴨川が流れる山紫水明の美しい環境がありますし、風格のある歴史的建造物もたくさんあります。それからしっとりとした落ち着きのある町並みなど多くの観光資源に恵まれています。また、京ものという品質や品格の高い品々も国内外を問わず人気を博していると思いますし、伝統産業と共に京都が世界に誇る先端的な産業とが、このまちで並存する。いわば産業の都市という顔と観光の都市という2つの顔を持つ非常にユニークなまちであることも京都の特性だと思います。しかしこれらは、まさに目に見えた京都の魅力であろうと思うのですが、外国人の方々にとって美しいと感じたのが、これら目に見える有形の文化財だけではなくて、実は魅力的なのは彼らが出会った京都人、京都の人そのものも魅力の1つなのではないかと思います。京都は歴史的な文化遺産が我々の日常生活の中に、四季折々の祭事の中に、それから冠婚葬祭の中に今もしっかりと息づいているまちだと思います。そういった意味で、京都の私達市民の暮らし、あるいは京都風のライフスタイルというものが、無形の文化財として外国人の方々にとっては高い文化的価値を持つのではないかと思いました。我々がこうした歴史的な恵まれた財産や文化の蓄積に囲まれて、優雅なあるいは優美な伝統文化を継承してきたからこそ、このまちが日本人の心のふるさとと言われるのではないかと思います。それから、京都創生の意義と言うものが、日本の良さ、あるいは我々日本人が誇りに思えるものとは何かというものをもう一度見つめ直し、確かな自信を持って、再び新たにスタートさせると言うことであろうと思うんですけれども、そういった意味で我々は、失われつつあるという景観や自然を保全し再生することも大切だと思います。同時に、例えば人として堅実であることや礼節を重んじながら他者の個性や異なりを認めながら京都人らしい謙譲の徳を積み上げていく、いわば京都人としての高い精神性というものを維持し育み続けていくことも大変重要だというように感じます。

 それから宗教を大切にして、自然や周りと調和していく京都独特の価値観というものも、次の世代にしっかりと伝えていかなければならないのではないかと思います。京都は「いけず」とか、たまに「しぶちん」とか揶揄されますが、「いけず」はある意味で筋を通してまっすぐで素直な気持ちをやわらかく人に伝える京都流の独特のコミュニケーションであると思いますし、「しぶちん」というのは物を大切に捨てずに扱っていく質素倹約に徹する京都人の生活の知恵が現れているように思います。これは2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境大臣でいらっしゃるワンガリ・マータイさんが提唱されている「もったいない運動」にもつながっていくと思います。それから「京都議定書」が採択された都市にふさわしい資源を大切にする環境意識を高めることにも、この「しぶちん」意識というのは貢献していくのではないかと思います。また、京都人の研ぎ澄まされた目利きの力、いわば「ほんまもん」と言うものを見極める鋭い選択眼、それから商品・サービスの質・品格を不断の努力で高めていくという京都人の取組み姿勢はこのまちの大きな魅力だと感じています。以上、観光振興とそれから生活者の視点から、京都創生について簡単にお話させていただきました。観光振興については後ほど時間があればもう少し話をしてみたいと思います。

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